命も救われて恋にも落ちた話。
※ロデリック団長が独身IF
年の差、というかおじロリが癖なもので…
「プライド様……」
思わず口に出してしまったが、自ら聞いて呆れてしまった。
まるで獣の唸り声のようではないか。
「ハァ……」
私自身がこのような感情を持っては
騎士たちを窘める存在である示しがつかない……。
「どうした?」
ロデリック、と呼びかけながら団長室に来ていたクラークに問いかけられた。
否、口角がやや上がっているからだいたい察しはついているのだろう。
無意識に眉間に皺が寄る。
「……いや、なんでもない」
気を取り直して書類に向かおうとペンをとった所
そういえば、とクラークから声が上がる。
「プライド様からお前に預かり物がある」
正確にはプライド様から受け取った近衛騎士に渡されたのだけれど、と傍においてあった籠に手をかける。
まさか……私に…?
籠にかけられた布をとるとクッキーと以前いただいた創作菓子が並べてあった。
更にその傍には……
「今回はロデリックだけにだそうだ。……よかったな」
刺繍入りのハンカチであった。
年の半分以上は護衛や任務についている私には妻も良き相手もいない。
そんな私に刺繡入りのハンカチを……
「………あの方はっ…男に刺繡入りのハンカチを渡す意味をご存じなのだろうか……‼‼‼」
自分でもわかるほど顔に熱が集中する。
思わず頂いたハンカチを掴んだまま顔を覆ってしまい
ハンカチからふわりとあの御方の香りがしてまた更に身体中の熱が上がる。
「プライド様だからな……平民のそういったやり取りはご存じないのかもしれない」と
先ほどより口角が上がり切った顔でバンバンと私の背中を叩きながらも笑いが漏れている。
「親友に春が来て嬉しいよ」
ちょっと遅いが、と笑いを堪えている。
あの御方が幼き頃、私の命を救ってくださった恩人
私が忠誠を誓った御方
……私が生きていてよかったと言ってくださった御方
「……」
やっと顔の熱が引き、クラークの方へ顔を向けると
先ほどと違い真剣な表情で椅子に座る私を見て
「お前の手で幸せにする方法もあるんじゃないか?」
ぼんっ
「~~ッ!! クラーク!!」
「菓子がいらないなら喜んで受け取るが」
誰がやるか!!と怒鳴り声をあげてしまう。
次にお会いする時までにお返しを考えなければ……
まだあの御方の香りがするハンカチを胸に当て、
しばらくはあの御方が喜ぶ姿を思い浮かべることにした。
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